
そういった患者さんはなかなか通常の咳止めでは治りません。患者さんの聴診でぜーぜーといった喘息様の呼吸音がすれば容易に気管支喘息と診断がつきますが、しない時にはその咳がどんなときに多いのかを問診します。夜寝る時や起床時、部屋を移った時、大きな声を出した時、タバコの煙が気管支に入った時に咳が起こりやすいと訴えがあれば咳喘息を疑います。
そういった場合には私は肺機能検査と胸部レントゲン写真を撮影します。肺機能検査では気管支喘息のように気道が過敏性を伴っているときにはピークフロー値PEF(私は患者さんに息を吐き出すときの瞬間最大風速と説明しています)が下がるので、その結果を参考にします。気管支喘息なら吸入ステロイドを用います。肺に病変があるとそれが使用できないので、何も無いことの確認のためにレントゲン写真を確認します。
レントゲン写真で異常陰影が無く、肺機能検査では他のデータが正常内で、PEFが80%を大幅に下回っていましたら、咳喘息と考えて吸入ステロイドと気管支拡張剤を処方します。すると大半の患者さんは1週間までに軽快治癒します。
同じような疾患でアトピー性の気管支炎もあります。花粉症やアレルギー歴を聞くことも必要なことです。
中には肺炎の患者さんも多いのです。聴診上、時には喘息のような呼吸音がしたり、高熱と難治性の空咳が続いたりするとレントゲン写真を撮影する必要があります。レントゲン写真で比較的肺の下側に濃淡が不均一な刷毛ではいたような異常陰影が見られたなら、おそらくマイコプラズマ肺炎です。
うっかり見落としてしまう咳に、高血圧の方の薬です。他の医療機関で薬をもらっているときには必ず話しましょう。ACE阻害剤と言って、レニベース、エースコール、コバシルやタナトリルと言った薬です。こういうタイプの薬はしばしば咳を誘発しますので、中止すると咳はぴたっと止まります。
さらに副鼻腔炎など鼻の症状が無いかどうかも重要なことです。最近では「One Way, One Disease(一つの道は一つの疾患)」といって鼻から喉、気管を通って肺まで行く気道は、同じような構造で出来ており、その流れの中にある慢性炎症は同じものであるという考え方です。副鼻腔炎症候群とも言われ、このような患者様には先程のマクロライド系抗生物質を長期少量投与によって改善することが多いです。この薬剤の持つ抗炎症作用、制菌作用や喀痰抑制作用などがあるためです。
もちろん長年の喫煙者なら慢性閉塞性肺疾患COPDを見逃してはいけません。そのためにも肺機能検査は重要なのです。
さらには肺癌もあります。レントゲン写真や肺機能検査で異常がないと言っても中枢性の肺癌であれば診断が付きにくい場合があります。そのときに喀痰細胞診を行います。この検査は患者様にとっては苦痛もない検査であり、多くの診断情報を提供してくれます。 さらには忘れ去られている肺結核も重要な疾患です。レントゲン写真で明らかでない、気管支結核もあります。これも喀痰検査が重要で、抗酸菌という菌を調べます。この中には定型的な肺結核、そしてやっかいな非結核性抗酸菌症というのがあって、治療法や強制入院などの患者様への対応も変わってきます。ただこの菌はすぐに見つかるとは言えず、培養を行って8週間まで経過を追うことが必要となります。そこで最新の技術として菌種をDNAで鑑別する方法です。ただし、死んだ菌かどうかは培養で判断しなくてはなりません。
他にも咳を起こす病気はたくさんあります。放っておいてどうもない病気といけない病気があります。咳が長引く場合には必ず専門医に相談しましょう。






