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医者からみた「上手な医者のかかり方」

日本の患者さんはドイツの患者さんと比べて医者のかかり方が下手なようです。医者からみてこのような患者さんであってほしいと先日ある会合で講演してきました。その秘訣をお教えしましょう。

1.ちょっとしたことで大病院にかからないこと
少しの風邪や腹痛で大病院に行く方が多いですが、数時間も待っていろんな検査をされ、たくさんの薬をもらって帰宅した時には、かえって病状がひどくなってしまった経験がおありじゃないですか?病院によっては紹介状がないために余計な初診料を追加されます。日頃から自分の主治医となる家庭医を持っていないためで、悲しいことです。ドイツを含めヨーロッパの方は家庭医を持っていますので、必ず家庭医に相談します。家庭医が専門医に診療を受けるのが必要と判断したら病院を紹介します。したがって病院の待合室はがらーんとしています。

2.人に聞いてあちこちの医者にかからないこと
日本の患者さんの典型です。医者の方も主治医としての自覚がなくなるので、他の医者に責任を委ねてしまうことになりかねません。実を言いますと私の伯母もその代表で、市の老人大学で情報交換がなされ、あっちの医者がいいよ、こっちの医者がいいよと言われては無料市バス券を使って、走り回っていました。
私のもとに来たときには糖尿病が悪化して直ちに治療を開始した次第です。

3.詳しい病状を聞きたいときには別の時間を設定してもらうこと
診療が混んでいるときにはなかなか詳しく説明できないのが現状です。医者の方も他の患者さんを長時間待たすことが気になり、不充分な説明になってしまうことがあります。十分に病状を聞きたい場合には空いてる時間帯とか、診療時間後に時間を設定してもらいましょう。お互いに時間が空いている時にゆっくりと話すほうが理解しえて、今後の診療もスムーズに行えます。

4.やたらといろんな薬を要求しないこと
自分でこの薬とかあの薬とか要求される患者さんが少なくありません。薬は必要最小限がもっともいいのです。「この医者はあまり薬をくれない。」と不満を言う患者さんがおられますが、薬も多くなると副作用や相互作用で問題が生じます。多いのが「胃が荒れますので胃薬を入れてください。」です。いろんなところでお寿司の生姜じゃあるまいし胃薬をもらわれ、胃薬ばかり山のような患者さんもおられます。笑い話ですが「先生、薬が多くて胃の調子がもうひとつです。」「じゃ、胃薬を入れておきましょう。」

5.病気を治すのは貴方であることを自覚すること
病気はあなた自身の問題です。いくら説明しても理解しようとせず、「私らは病気に素人ですから。」と繰り返した経験がおありじゃないですか?治療法を選択する権利もあれば、病気を理解する義務もあなたの責任の上にあるのです。それでも迷ったなら医者の薦める治療を行いましょう。

6.検査結果を聞きに来ること
検査を受けたのは良いが、結果を聞きに来ない患者さんをしばしば見うけます。そのような時にはこちらから電話で結果を知らせますが、前述したように本来は患者さん自ら出向いて詳しく結果を聞き、そのデータを保管しておくべきです。多いのは働き盛りの中年の男性で、家族にすすめられて検査を受けたまでは良いが、検査結果を聞くのが怖いのです。もし、自分の身に何かあればどうしょうと不安なのです。

7.初診時からお互いに信頼を持って接すること
最近のマスコミの過剰な医療不信報道のあおりか、最初から不信感を持ってこられる患者さん、とくに子供を持つ母親に目立ちます。それなら医療機関にかからなければ良いのにと思うのですが、こちらの説明に常に首を傾け、聞こうとしない動作が見られます。そのような雰囲気では医者も突っ込んだ治療は行わず、できるだけ他の医療機関に行ってほしいと思うようになります。お互い目と目を合わせて信頼感を持ちながら診療が行える場にすべきです。

8.聞きたい事や不満などは直接医者に言うこと
長年の日本の風潮か、医者に聞きたいことや不満を述べることは避け、疑問点や不満などは医者に言わずに受け付けや看護婦に訴えることが多いようです。患者と医者は指示される側と指示する側での差がありますが、あくまでも対等であるべきで、これらは医者に訴えればよろしい。そのことにより本音で話し合え、溝を埋めることができます。ただし、理不尽な訴えをする患者さんもおられますが、そのときには医者から諭すこともあります。一方、訴えただけで怒りまくる医者もいますが、そんな場合には即刻医者を代えたほうが良いでしょう。お互い”支持”し合える関係にしたいものです。

9.医者から指示された事項は最低限守ること
医者から薬の服用や生活食事指導が出されますが、最低限すら守れない患者さんが多いのが目立ちます。とくに高血圧症、狭心症、糖尿病や喘息といった日頃十分注意しなければならない患者さんの場合にはなおさらです。煙草やアルコールなどの嗜好品につい手がいってしまいますが、お互いに約束したことは守りましょう。前述したように病気を治すのは貴方なのですから。

10.医者も生身の人間、失敗もあれば誤診もあることを知る
科学に絶対というのがないのと同様、医者も生身の人間であり点滴の失敗や手術後の出血、さらに誤診もします。ただ、その失敗を未然か重篤になる前に適切な処置が行えたかが、重要なのです。医者も長い間に悔しい失敗は何回か経験しています。その経験が医者を育てているといっても過言ではありません。かつて高名な東大内科教授が退官記念講演で「70数%の症例に誤診をした。」と述べられたことがありました。これは少しの見落としも含めてでしょうが、これほど医療技術が発達しても失敗はあるのです。むしろ現在の方が高度な医療を行うことが多くなっただけ、より失敗の頻度は増えたかもしれません。それを早期に発見し、適切な処置をとってくれる医者であれば医者への不信感をもつ必要はないし、より信頼すべきでしょう。