本日報道ステーションで「麻酔医が足りなくて手術が出来ない事態に陥っている」と報道しておりました。小児科医や産婦人科医の不足ばかりが脚光を浴びていますが、外科医と同様麻酔科医も少ないのは前から分かっています。麻酔医が集中治療室(ICU)も担当することが多く、手術中はそれに立ち会い、手術が終わったらICUの患者さんも管理する。救急部も兼ねていることも多いです。過酷な勤務状況です。過労死している麻酔科医は後を絶ちません。外科手術での麻酔医がいないので、私たち外科医が代わりに麻酔をかけることが良くありました。麻酔をしながら他の外科医の手術を見て覚えることもありましたが、その手術の間、何も出来ずある意味苦痛でもありました。

 そんな状況で病院を退職して、フリーの麻酔医になる医師も多いです。私が良く手術に行くときに麻酔をかけてくれる元病院麻酔科部長によると「開業資金や医師会入会金も要らないし、開業届も要らないのである意味退職しやすい土壌がある」と話されていました。その一方で麻酔科医としてのジレンマがあるようです。「医師になったら患者さんを病気から治したいと誰だって思うのですが、麻酔医は外科の手術をお手伝いする陰の役割で、患者さんからは麻酔科医に対して何ら評価の対象とされない」。その言葉は重要です。多くの患者さんは外科手術を受けるときに麻酔科医の診察がありますが、術後どの麻酔科医に麻酔をかけてもらったかどれほどの患者さんは覚えているでしょう。外科医が手術を安全に行えるのは麻酔科医のおかげなのです。すべての生命のコントロールを術中は麻酔科医が握っているのです。麻酔科医の努力には本当に外科医として頭が下がる重いです。

 こんな過酷で重労働の麻酔科医に対してもっと評価して良いのではないでしょうか?患者さんも術後退院する前には担当した麻酔科医に少しでも感謝の言葉をかけていただきたい。外科医に対してと同様に。麻酔科医はその言葉をどれほど嬉しく思うでしょう。麻酔科医は裏方でありながら、重要な医療の現場を支えていることを実感されるでしょう。そうすれば麻酔科医になろうとする医師も多くでてくるでしょう。(安田雄司)