医療情報

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ぜんそく(喘息)Q&A

ぜんそくQ&A

メール健康相談で、ぜんそくに関して多い質問をまとめました。

必ずしもアレルギーが原因とは限りません。小児の場合はアトピー型が多いですが、成人の場合は非アトピー型が多い傾向にあります。

ぜんそくでは気道の壁が慢性の炎症で過敏な状態になっています。ゼーゼーは気道が狭くなった発作の状態で、その症状がおさまってもぜんそくは存在するのです。治ったとは自己判断しないでください。

ぜんそくは気道壁の慢性炎症ですから、その炎症をとらないと良くなりません。そのためには吸入ステロイドが第1選択剤になるのです。ぜんそくの状態によって大人はもちろん2歳未満の小児からでも用いていますが、他の薬剤に比べて副作用はほとんどありません。

本院に来られた患者さんのデータを整理しましたら、吸入ステロイドの使用方法が必ずしも正しくはありませんでした。使用量が少なすぎる、吸入補助具を使用していない、発作のときのみに使用しているなどです。当院で診療している患者さんの85%は吸入ステロイドとβ2刺激吸入剤(気管支拡張剤)のみで良好な管理ができています。

成人ぜんそく患者の10〜20%にアスピリン様の非ステロイド鎮痛解熱剤の内服や注射(湿布剤でも)により発作を生じる「アスピリンぜんそく」があると言われています。発作を生じると非常に危険なことが多いので十分注意が必要です。見分けは困難ですが、成人で非アトピー通年型、鼻茸や副鼻腔炎などの手術既往歴、やや女性に多い傾向があります。

吸入ステロイドを用いたぜんそくの治療が確立し、今では国内で年1,500人程度の死亡数まで減少しました。その9割は高齢者で、必ずしもぜんそく死とは限りません。しかし、欧米に比べたらその数は多いので、決して治療をいい加減にしてはいけません。

自分のぜんそくの状態を客観的に把握する必要があります。高血圧の患者さんが血圧を測るのと同じように気道の炎症状態を測るためにピークフローメーターやFeNOを測りながらぜんそくの状態をみます。薬剤を減量して発作も数年起こらず安定していれば薬剤を中止することも可能ですが、自己判断で中止しないでください。

良くないです。年に数回β2刺激吸入剤を吸入して軽快する場合は良いですが、1週間に何回も吸入するようなら吸入ステロイドが必要です。日頃からぜんそく症状がないかを自己判断するのは困難です。でないとリモデリングといって気道が狭くなったままで元に戻らない状態に陥ります。

前述しましたようにぜんそくは慢性疾患ですから常に存在するのです。残念ながらぜんそくを完全に治すことは困難です。高血圧の患者さんのような血圧という客観的データがないのでどうしても症状が落ち着くと受診したくない気持ちはわかります。風邪ではないということを認識してください。

風邪が2ヶ月も続くことは考えにくいです。ゼーゼーはせずに空咳のみで咳止めが効かない場合に「咳ぜんそく」という病気の可能性があります。このような場合には気管支拡張剤や吸入ステロイドが奏効します。他にも肺結核など様々な疾患も考えられますので正確な診断を受けてください。

妊娠後期になってくると横隔膜を圧迫するので妊娠中も安定したコントロールを保つことが重要です。出産間近にぜんそく発作を生じると呼吸困難を生じ、胎児にも低酸素の状態に陥り母子とも危険な状態になります。吸入ステロイドの安全性は高く欧米でも吸入ステロイドを勧めていますし、私も吸入ステロイドでコントロールしております。

逆流性食道炎によってむねやけを生じることが多いのですが、この症状がぜんそくの増悪因子といわれています。タケプロンやオメプラールなどのPPIという強力な制酸剤を用いることで逆流性食道炎を軽快させ、ぜんそくの症状も軽快することが多いです。

吸入ステロイドの主な副作用です。喉の違和感や嗄声(声がかれる)などがしばしば見られます。ぜんそくが落ち着いていれば吸入量を減らすことでその症状は消失することがあります。吸入剤を変えることでも軽快することがあります。主治医と相談してください。

決してそうではありません。ピークフローメーターは各種のメーカーから製品を出されていますが、値は各種の規準に基づいて設定値が異なります。担当の先生にそのピークフローメーターの設定表から予測値を計算してもらってください。余談ですが、年齢が変わってくると当然設定値も変わりますので注意してください。

確かにこのような不安をもっておられる方は非常に多いです。私はいつも某製薬会社の医療情報担当者に転居先の近くでぜんそくのガイドラインに沿った治療をきちんとやっておられる病院や診療所を探してもらっています。先生の診療態度も聞いて選択しております。今のところ相談を受けた方からは感謝されています。私の将来の目標はぜんそく専門医のネットワークを作ることです。患者さんがどこに転居や旅行されても安心して専門医にかかられるようにしたいのです。

通常ではスギやヒノキでの花粉症ではぜんそくが起こらないと考えられていますが、花粉の飛散が多い年では咳や喘鳴などぜんそくの状態に陥ることがあります。イネ科やキク科の花粉症では場所により花粉の密度が濃いのでぜんそくを生じることはよくあります。

確かにぜんそくの専門医でも若干治療法は異なると思います。しかし、どのガイドラインにおいても基本的には吸入ステロイドとβ2吸入刺激剤を使用することです。この吸入剤を出されない場合には一度相談すればいいでしょう。

残念ながらぜんそくは治癒することは困難です。しかし、小児のぜんそくは成人になるまでに大方は治癒もしくは寛解します。しかし、成人ぜんそくははっきりとした原因(イヌ、ネコ、ウサギなど)のある方は除去することで治癒することはありますが、大方の方は原因が複雑で治癒しないと考えてください。今後はどうしてうまくコントロールをしていくかが重要なのです。症状が治まっていても決して治癒したと思わないことです。

初診で受診されるぜんそくの方の症状として、「長い間咳が出たり」、「痰が詰まったような感じがしたり」、「夜になると何か息苦しくなったり」する方の方が多いです。これもぜんそく症状と考えてください。ぜーぜーといった症状や呼吸困難を訴えられる一般にぜんそく発作と考えられる症状の方が診療所では少ないかもしれません。

現在、ぜんそくの基本的な薬剤は吸入ステロイドですが、小児の場合には一部の報告で身長の伸びが遅れるとあります。しかし、使用されていても最終的に伸長の差は生じないとの報告が多いです。また、骨粗鬆症を誘発されるとありますが、加齢とも影響を受けますのでこの薬剤によって促進されることはないと考えられます。若い女性の場合には妊娠という問題が起こりますが、妊婦には最も吸入ステロイドが安全と認められています。時には口の中にカビが生えることがあります。正常人でも 10%の方にもみられるのですが、もしカビが確認されたら吸入量を減らし、口の中に使用する抗真菌剤を使用します。ピークフローを測定していて値や症状が安定しているのなら薬剤の使用は不要です。

運動することでぜんそくが誘発されることがあります。また、バイクで冷たい風を受けられて発作性にぜんそくが起きることがあります。さらには都会であればトラックなどの排気ガスでぜんそくが生じることもあります。私も排気ガスでぜんそくを生じることがあり、通勤の車では室内換気のみしています。

風邪とはいろんな症状の集まった症候群ですので、安易に総合感冒薬は服用しない方が良いでしょう。非ステロイド系の鎮痛消炎剤でひどいぜんそく発作を起こす方が少なからずありますし、テオフィリン製剤を服用されている方の場合には一部の抗生物質でテオフィリンの血中濃度が上昇することもあり要注意です。できるだけ症状についてのみおさえる治療の方が良いでしょう。

親御さんの中でタバコを吸われる方はいませんか?タバコにはアンモニアが含まれていて副煙流の方が100倍も高いのです。アンモニアは刺激が強いので気道の過敏性を増している気管支ぜんそくの方には増悪因子となります。換気扇や空気清浄機は使用されていてもあまり効果的ではありません。近年公の場で喫煙場所がなくなるのも気管支ぜんそくの患者さん (全人口の約15分の1)が周りにたくさんおられるために受動喫煙から防止する必要性として出来た法律なのです。

非ステロイド系抗炎症剤(いわゆる(ボルタレンやロキソニンなどの鎮痛解熱剤)、β遮断薬(降圧剤の1つで、メプチンエアと逆の作用なので気管支を狭くする)と麻薬(モルヒネなどは気道攣縮を引き起こす)などは使用してはいけません。他にもぜんそくを誘発する薬剤はありますが、詳しくは担当の先生にお聞き下さい。なお、市販で売られている鎮痛剤の湿布や塗布剤でも起こりますので、決して市販薬が安全とは思わないでください。

アスピリンぜんそくかどうかその半数以上は患者さんご本人も医者も気がついていないことがあります。しかし、ある程度の特徴があります。成人になってからのぜんそく、やや6:4でやや女性に多い、慢性の鼻炎症状、慢性副鼻腔炎や鼻茸があるか治療歴のある方、嗅覚異常の方、アレルギー検査が陰性の方、季節に関係なくぜんそくがある方、血液検査で好酸球という白血球が多い方といったことが分かっています。私も現在20数人ほどアスピリンぜんそくの方を把握しておりますが、大方これらの特徴を持っているようです。