医療情報

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長引くせき(咳嗽)とはどんな病気でしょう?

当院で受診される患者さんの最も多い訴えです。

急性に起こってきた咳は急性上気道炎と感染後の咳嗽が多く、長引く遷延性咳嗽においても感染後咳嗽が多くを占めます。一方、慢性の咳嗽では多くは非感染型が主となります。

活動型の感染性咳嗽の多くは肺炎マイコプラズマ、百日咳、肺炎クラミジアです。これらはマクロライド系抗菌剤が第1選択ですが、感染がピークを過ぎた感染後咳嗽では自然に軽快しますので経過観察として抗菌剤は使用しません。

咳ぜんそく

夜間〜早朝にかけて咳が悪化(とくに眠れないほどの咳や起きて咳き込む)するのが特徴で、症状に季節性や変動性があります。治療としては気管支拡張剤が主となります。

アトピー咳嗽

症状の季節性、咽喉頭のいがいが感やかゆさが主体となって咳が生じます。治療薬としては抗ヒスタミン薬が主となります。

副鼻腔気管支症候群

慢性副鼻腔炎の既往、実際に副鼻腔炎症状(鼻づまり、膿性鼻汁、頭痛など)のある患者さんの場合この疾患による咳を考えます。マクロライド系抗生物質に去痰剤、ロイコトリエン拮抗薬などを症状に応じて併用して治療します。

食道逆流症咳嗽

食道症状(胸やけなどの)存在、会話時・食後・起床直後・就寝直後・上半身前屈時に悪化する場合、体重増加に伴う悪化、亀背を認める場合などにはこの咳を考えます。治療には胃酸を押さえるPPI(タケキャブ錠、ネキシウム、パリエットなどを)用います。

感染後遷延性咳嗽

上気道炎が先行し、徐々にでも自然軽快傾向がみられる場合、とくに持続時間が短いほど感染後咳嗽の可能性が考えられます。有効な薬剤はないので経過観察をしますが、症状に応じて中枢性の咳止めを使用します。

COPD・慢性気管支炎

現喫煙者で痰の絡んだ咳の場合には禁煙を指導します。薬剤としては長時間作用型抗コリン剤を使用します。

ACE阻害剤による咳嗽

高血圧症の薬でレニベースやタナトリルなどのACE阻害剤を服用している場合にはこの副作用で咳が生じることがあります。その場合には休薬し、別のタイプの降圧剤を処方します。

心因性咳嗽

新たな概念であり、多くは学童期〜思春期にみられ性差はありません。成人では女性に多い傾向があります。基本的には除外診断であり、心理社会的因子の影響を留意して診察していくことが多いです。抗不安薬や抗うつ剤などを処方します。

その他の咳嗽

気管支内腫瘍、気道内異物、気管支結核、不整脈などによっても咳が起こってきますので、咳の診療は奥が深いです