医療情報

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肺結核とはどんな病気でしょう?

肺結核と聞いて皆さんは、「かつては亡国病と恐れられた肺の感染症で、今ではすでに日本では感染者はいなくて忘れ去られた病気」と思われていませんか?
実は「日本の結核に罹る率は2017年に人口10万対13.3まで低下したもののまだ10以上と上回っており、結核中蔓延国」なのです。新規登録結核患者のうち70歳以上が59%、80歳以上では40%を占めています。
罹患原因として様々な要因がありますが、多くは加齢に伴う免疫低下による再燃と考えられています。

症状

  • 2週間以上長引く咳
  • 抗菌薬に反応が鈍い不明な熱
  • 体重減少、寝汗、食欲不振などの全身症状

などがあげられます。1年以内に結核感染者との接触歴も診断に重要な判断材料です。
最近では「結核」を診たことのない若い医師が増えていますのでこのような症状が続く場合には呼吸器の専門医に相談しましょう。

画像所見

通常は肺の上部(専門的にはS2)や下の肺の上部(S6)に好発します。
一般に見るのは写真(図1、2)のようにドーナツ状の空洞陰影ですが、図(3,4)のように多数の小結節陰影の場合もあり、一見肺炎と誤診してしまうこともあります。

検査所見

通常、肺結核は痰や気管支の洗浄液で結核菌の塗抹培養検査をおこないますが、採取できない場合には胃液を採取して検査を行います。培養までは時間が掛かることもありPCR法などの核酸増幅検査で結核菌の有無を確認します。他にも検査法がありますが省略します。

入院基準

結核は2類感染症ですので、結核と診断された場合には直ちに地元市町村の保健所(京都市では医療衛生センター)に届けなければなりません。
入院とすべき基準は、肺結核、気管・気管支結核、喉頭結核、咽頭結核の患者で、下記となります。

1. 喀痰塗抹検査が陽性

2. 喀痰塗抹検査「陰性」だが、喀痰以外やPCR陽性かの場合

  • a. 感染の恐れがあると判断される患者
  • b. 外来では規則的な治療が困難、早晩大量排菌、多剤耐性結核に至ると判断される患者

治療と問題点

治療法は3,4種類の抗菌剤を併用して、所定の治療期間行います。それぞれに副作用もありますので専門医での治療が必要となります。
最近問題となるのは、多剤耐性結核が3%前後、潜在的にいるということです。
中途半端な治療で終了した患者や治療後の再燃の患者に多くみられ、とくに東南アジアなどからの就労目的の留学生からの感染も少なくないので注意する必要があります。

(参考:長谷川直樹:呼吸器疾患の治療2019-2020)