医療情報

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ぜんそく(喘息)とCOPDの吸入剤について

ぜんそくとCOPDの吸入剤

現在、当院で処方している吸入剤について説明します。

吸入器の種類によって使用方法が変わります。正しい吸入方法を身につけることが必要です。
パウダータイプやエアタイプ、カウンターが付いていたり、スペーサーが不要であったり、患者さんの状況に応じて使い分けが必要です。
吸入ステロイド剤には粒子の大きさも選択基準になります。さらに薬価も差があります。
当院ではすべての吸入ステロイドを用いていますので疑問があればご相談ください。

独立行政法人環境再生保全機構のホームページでは全ての吸入剤の使用法を動画で公開されております。
下記のホームページを開いてみていただければ自宅でも復習することができます。

独立行政法人環境再生保全機構

A.エアゾールタイプ(吸入ステロイド剤)

正しい吸入方法を動画で見る

キュバールエアゾール

ぜんそく適応
エアタイプの吸入ステロイドです。
超微粒子の薬剤で肺内への到達率が高く、スペーサーも不要ということもあり、中等症から重症の患者さんに用いています。小児にも適応があります。カウンターがないのと2吸入/回×2回/日吸入では1本で25日しか持たないのが難点です。

フルタイドエアゾール

ぜんそく適応
エアタイプの吸入ステロイドで、フルタイドディスカスと違って乳糖が含まれていないので無味無臭です。
主に小児や高齢者などの低肺機能の方に用いています。50μ、100μが発売されています。2吸入/回×2回/日吸入です。
カウンターが付いていないのとスペーサーを使っての吸入が望まれます。

オルベスコインヘラー

ぜんそく適応
エアタイプの吸入ステロイドです。
口腔カンジダ症の発生が少ないと言われています。 1日1回の吸入で良いため、保護者の負担を考えて小児にはこの吸入剤を選んでいます。
他のエアタイプ薬剤と違って口を閉じて吸入することをメーカーは勧めていますが、口を開けて吸入する薬理データがないためとのことで他の薬剤同様にオープンマウスでの吸入でも良いと説明しています。
スペーサーの使用をお勧めします。
新型コロナウイルス感染症に効果があると言うことで一躍脚光を浴びました。

A.エアゾールタイプ(吸入ステロイドICS +長時間作用型β2刺激吸入LABA配合剤)

吸入ステロイド剤と長時間作用型β2刺激吸入剤(LABA)との配合剤で、現在ではエアロゾールタイプとパウダータイプを合わせてアドエア、シムビコート、フルティフォームとレルベアが保険医薬品として収載されています。
配合剤にすることでLABA単独の吸入は無くなり、効果が相乗的に増し、患者さんの負担が少なくなり吸入する習慣性が増します。ただ、薬剤は高価です。
ぜんそくが安定し低容量の吸入ステロイドでも管理が可能であれば吸入ステロイド単独に戻すことも重要です。

フルティフォーム

ぜんそく適応
フルタイドのICSフルチカゾンとシムビコートのLABAホルモテロールの配合剤です。2吸入/回×2回/日吸入で、口を閉じてゆっくり吸入することで肺の奥まで入りこます。
優れた薬剤ですが、高齢者にはカウンターが見にくいのと押すのに補助器具を使用することをお勧めします。

アドエアエアゾール

ぜんそく適応(125μはCOPDにも適応)
アドエアエアはフルタイドのICSフルチカゾンとセレベントのLABAサルメテロールの配合剤です。50μ、125μと250μが発売されています。
通常2吸入/回×2回/日での使用方法ですが、増減ができないため、患者さんの状況に応じて用量を変更する必要があります。
効果は良好で速やかにぜんそくの諸症状を取り除きますが、500μを継続的に使用すると嗄声の頻度が増します。

A.エアゾールタイプ(長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA+長時間作用型β2吸入剤LABA)

COPDにおいて中枢気道に働きかけるLAMAと末梢気道に働きかけるLABAを配合した吸入剤です。
その効果は良好でCOPDの多くの患者さんが呼吸苦の改善を言われております。
どの薬剤を処方するか患者さんの全身状態や吸入器の手技などを考慮して処方しております。

ビベスピエアロスフィア

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COPD適応
唯一のエアータイプのLAMA+LABAです。2020年10月から一ヶ月処方が可能です。シーブリとオーキシスを配合した薬剤と思っていただければ良いです。一ヶ月処方が出来るようになって長期的な効果に期待しております。

A.エアゾールタイプ(吸入ステロイド剤ICS+長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA+長時間作用型β2吸入剤LABA)

最近新しい概念としてぜんそくとCOPDの両病態を併せ持った「ぜんそくCOPDオーバーラップ(ACO)」と呼ばれるようになりました。
ぜんそくには「吸入ステロドICS」が第1選択薬で、COPDには「長時間作用型の抗コリン剤LAMA」が第1選択薬剤でその両方にも作用する長時間作用型β2刺激吸入剤LABAの3剤を加えた薬剤が相次いで発売されました。

ビレーズトリエアロスフィア

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COPD適応
シーブリの長時間作用型抗コリン剤LAMAのグリコピロニウムとシムビコートの主成分である長時間作用型β2刺激吸入剤LABAのホルモテロールとブデソニドの吸入ステロイドICSの配合剤です。
両薬剤の器具とは違った吸入剤なので高齢の患者さんには最初は指導が必要になります。テルリジーと比べて吸入時の刺激が少ないかもしれません。

A.エアゾールタイプ(短時間作用型β2刺激吸入剤SABA)

通常SABAと呼ばれている薬剤で、咳が出るとか痰が切れないとかといった発作の時に用います。あくまでも単独で用いてはいけません、吸入ステロイドを使用した上でこのSABAを必要時に用います。
患者さんには「自宅にある消火器と思ってください。キッチンでフライパンが燃えたら消火器を使うように、日頃は火の用心(吸入ステロイド剤)で管理しましょう。使わないように持って管理する方が良いでしょう!?」と説明しています。
速やかに効果がある反面、人によっては副作用があります。動悸、頻脈や手の震えといったものです。
当院では、メプチンエアー、メプチンスイングヘラー、サルタノールインヘラーを処方しています。

メプチンエアー(左)、サルタノール(右)

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ぜんそく・COPD適応
どちらもSABAです。SABAを頻回に用いる重症ぜんそくやCOPDの患者さんにはサルタノールをほとんど使用しない軽症の患者さんにはメプチンエアを処方しています。頓用で使用し、2吸入/回です。必要に応じ小児ならび副作用の出る成人の方にはメプチンキッドエアを処方します。サルタノールはカウンターがないので天秤の残量計を調剤薬局でもらえます。サルタノールは筒が長いので母指筋力が弱い高齢者は補助器具があります。

B.パウダータイプ(吸入ステロイド剤)

アズマネックスツイストヘラー

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ぜんそく適応
モメタゾンフランボカルボン酸エステルの薬剤で、パウダータイプの吸入剤でキャップを外すだけで直ぐ吸入できるため、使用方法が簡単です。さらにカウンターが付いています。安全性が高いです。12歳以上の持続性ぜんそく患者さんに用います。

パルミコートタービュヘイラー

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ぜんそく適応
パウダータイプの吸入ステロイドです。フルタイドなど比べて力価が1/2です。安価な薬剤で嗄声や口腔カンジダ症などの発生は低く、さらに妊婦さんにも使用が勧められる薬剤です。ただ、カウンターが付いていますが、わかりにくいのが難点です。生後6ヶ月以上の小児にはパルミコート吸入液があり、ネブライザーで吸入します。

フルタイドディスカス

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ぜんそく適応
パウダータイプのフルチカゾンプルピオン酸の吸入ステロイドです。発売当初はフルタイドロタディスクという4回分の薬剤が1ディスクに充填され、それを回して吸入するタイプでした。現在も販売していますが、多くがディスカスに移行してきたので、当院もディスカスに統一しました。通常1吸入/回×2回/日です。乳糖が含まれていて吸入したときに甘みを感じます。粒子が粗いので肺内到達率が低く、また口腔内に残るため十分なうがいが必要です。カウンターも付いていて、他にアドエアディスカスとも同じ操作なため、アドエアからの減量などの際は患者さんも受け入れやすい薬剤です。

アニュイティエリブタ

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ぜんそく適応
レルベアなどで用いられているフルチカゾンフランカルボン酸の吸入ステロイドICSです。エリブタシリーズで吸入剤の使用法が統一され、さらに1吸入/回×1回/日なので患者さんには受け入れやすく、薬価も低く抑えられています。ただ、複数のエリブタ吸入剤を使用する場合には色分けのみの鑑別で間違いを生じる危険性は否めません。

B.パウダータイプ(吸入ステロイドICS +長時間作用型β2刺激吸入LABA配合剤)

アドエアディスカス

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ぜんそく適応(250μのみCOPDに適応があります)
もっとも最初に登場した配合薬剤です。フルタイドとセレベントの配合剤で、ディスカスは100μ、250μと500μが発売されています。通常1吸入/回×2回/日での使用方法ですが、増減ができないため、患者さんの状況に応じて用量を変更する必要があります。
効果は非常に高く、速やかにぜんそくの諸症状を取り除きます。500μを継続的に使用すると嗄声の頻度が増します。

シムビコートタービュヘイラー

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ぜんそく・COPDに適応
パルミコートのブデソニドICSとホルモテロールLABAの配合剤で、1回吸入ステロイド160μとLABA4.5μが配合されており、吸入回数が1日最大8吸入まで増減することが可能です。したがって2吸入/回×2回/日吸入に、さらに4吸入まで追加することができます。私は通常最大計6吸入/日までとしております。この薬剤は速やかな気管支拡張作用を要しており、メプチンエアなどのSABA代わりに臨時での吸入としても使用できます。SMART法と言います。したがって複数種類の吸入剤を使用することが困難なときやSABAで手の震えや動悸などの副作用が出る患者さんにはこの薬剤を選択しております。

注)最近、吸入剤としては国内はじめてこの薬剤のジェネリックが発売になりました。ただ、問題は薬剤の粒子径や1回の吸入量などの詳細な情報が添付文書に記載されておりませんし、医療情報担当者が説明にも来ません。他の医療機関でこのジェネリックを使用された患者さんの意見を聞いた結果、当院では処方はしない方針です。

レルベアエリブタ

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ぜんそく適応(100はCOPDに適応があります)
フルチカゾンフランカルボン酸エステルの吸入ステロイドICSと長時間作用型β2刺激吸入剤ビランテロールLABAの配合剤です。エリブタシリーズで吸入剤の使用法が統一され、さらに1吸入/回×1回/日なので患者さんには受け入れやすく、薬価も低く抑えられています。100μと200μがあります。

アテキュラブリーズヘラー

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ぜんそく適応
最も新しい薬で、LABAのインダカテロール酢酸塩とICSのモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/ ICS配合剤です。つまり、オンブレスとアズマネックスの配合剤と考えれば良いでしょう。

B.パウダータイプ(長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA)

LAMAを含む抗コリン剤は処方する場合には副作用に十分注意する必要があります。まずは緑内障です。緑内障の多くは開放隅角型緑内障でその場合にはとくに副作用は少ないのですが、緑内障の治療を受けられている患者さんは眼科の先生に必ずご相談ください。つづいて尿閉です。前立腺肥大症のある患者さんは注意を要します。必要に応じて前立腺肥大症の診断を泌尿器科にお願いする必要があります。ほかに口渇感が生じます。何か副作用があれば直ちにご報告ください。

スピリーバハンディヘラー

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COPD適応
チオトロピウム単独のLAMAです。この薬剤が発売されてからそれまで有効な薬剤がなかったCOPD治療に光が差してきました。レスピマットが出る前はこのハンディヘラーでした。カプセルを充填し針で突いて吸入するパウダータイプの薬剤でしたが、吸うのにかなり力が必要でした。いまではミストタイプのスピリーバレスピマットを使用することがほとんどです。

エクリラジェヌエア

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COPD適応
アクリジニウム単独のLABAで、1吸入/回×2回/日の薬剤です。最近ではCOPDには長時間作用型抗コリン剤LAMAとの配合剤を処方することが多くなり処方数は減っています。ボタンを押して吸いますが、押せば信号が赤色から緑色になり、正しく吸えば再び赤色に変わります。

シーブリブリーズヘラー

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COPD適応
グリコピロニウム単独のLAMAで、オンブレスと同様1カプセル/回×1回/日の薬剤です。吸入しやすい器具ですが、この薬剤も他のLAMAと同様単独で用いることは少ないです。

エンクラッセエリブタ

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COPD適応
長時間作用型抗コリン剤LAMAのウメクリジニウム単剤の吸入剤です。レルベアと同じ仕様の器具エリブタであり1吸入/回×1回/日の薬剤です。LAMAの作用は他と同じですがカウンターの数字も大きく高齢の患者さんにはわかりやすい仕様です。

B.パウダータイプ(長時間作用型β2刺激吸入剤LABA)

長時間作用型のβ2刺激吸入剤です。通常LABAと呼ばれている薬剤で短時間作用型吸入剤SABAに比べて副作用が少ないのが特徴です。SABAのように速やかな作用が無く半日通して気管支を拡張します。ただ、ぜんそくなどには単独で用いることはありません。多くは吸入ステロイド剤ICSが含まれた配合剤として用います。

セレベントディスカス

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ぜんそく・COPD適応
最も早く発売された長時間作用型のβ2刺激吸入剤です。しかし、アドエアはフルタイドとセレベントの配合剤で、配合剤にする方が相乗効果を得られやすいために、アドエア発売後この薬剤の処方機会はほとんどありません。ただフルタイドが合わない場合、他の吸入ステロイドと組み合わせるときに用いることがあります。

オンブレスブリーズヘター

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COPD適応
COPDの適応として最初に発売されたインダカテロールのLABAです。一回ごとカプセルを充填して吸入します。非常に吸いやすく音がするので十分に吸えたか確認することができます。ただ、吸入して咳を生じるという訴えが多いです。最近ではCOPDには長時間作用型抗コリン剤LAMAとの配合剤を処方することが多くなり処方数は減っています。

オーキシスタービュヘイラー

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COPD適応
COPDの適応として最初に発売されたホルモテロールフマル酸塩水和物のLABAです。いわゆるシムビコートからパルミコートを除去したのがオーキシスです。1吸入/回×2回/日です。単独で用いることはセレベントやオンブレスなどと同様処方する機会は少ないです。

B.パウダータイプ(長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA+長時間作用型β2吸入剤LABA)

ウルティブロブリーズヘラー

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COPD適応
シーブリのグリコピロニウムのLAMAとオンブレスのインダカテロールLABAの配合剤で、使用は同じくブリーズヘラーカプセルを充填するタイプで1カプセル/回×1回/日の薬剤です。ほかのLAMA+LABAよりしっかり吸えたかどうかの確認ができます。

アノーロエリブタ

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COPD適応
長時間作用型抗コリン剤LAMAのウメクリジニウムと長時間作用型β2刺激吸入剤LABAのビランテロールとの配合剤です。レルベアと同じ仕様の器具エリブタであり1吸入/回×1回/日の薬剤です。カウンターの数字も大きく高齢の患者さんにはわかりやすい仕様です。

B.パウダータイプ(吸入ステロイド剤ICS+長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA+長時間作用型β2刺激吸入剤LABA)

テルリジーエリブタ

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ぜんそく・COPD適応
長時間作用型抗コリン剤LAMAのウメクリジニウムと長時間作用型β2刺激吸入剤LABAのビランテロールとフルチカゾンフランカルボン酸エステルの吸入ステロイドICSの配合剤です。レルベアやアノーロと同じ仕様の器具エリブタであり1吸入/回×1回/日の薬剤ですから、ぜんそくからACOに移行した患者さんには抵抗なく移行しやすいと考えます。実際に処方しておりますが、効果は良好です。カウンターの数字も大きく高齢の患者さんにはわかりやすい仕様です。

エナジアブリーズヘラー

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ぜんそく適応
最も新しい薬で、LABAのインダカテロール酢酸塩、LAMAのグリコピロニウム臭化物、ICSのモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS配合剤です。つまり、ウルティブロとアズマネックスの配合剤と考えれば良いでしょう。その前に出たテルリジーやビレーズトリがCOPD適応なのに対してこれはぜんそく適応になります。非専門医にとってはやや混乱する状態になりそうです。他のシリーズと同様のブリーズヘラーですので1日1回投与です。

B.パウダータイプ(短時間作用型β2吸入剤SABA)

メプチンスイングヘラー

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ぜんそく・COPD適応
メプチンエアのエアロゾールの吸入が難しい患者さんにはパウダータイプのスイングヘラーを処方しております。一回吸入ごとにボタンをプッシュしてその都度吸います。効果にはメプチンエアと同じです。

C.ミストタイプ(長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA)

スピリーバレスピマット

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ぜんそく・COPD適応
チオトロピウム単独のLAMAです。
この薬剤が発売されてからそれまで有効な薬剤がなかったCOPD治療に光が差してきました。当初はハンディヘラーといってカプセルを充填して吸う器具でしたが、吸うのにかなり力が必要でした。レスピレーターマットになってからミスト状の煙が出ますので吸う力が弱い患者さんにも吸入しやすい薬剤です。2吸入/回×1回/日です。
発売時はCOPDのみ適応でしたが、現在は中等症以上のぜんそく患者さんにも適応となっております。
吸入前にカートリッジを充填する必要があります。その際には力を要しますし、吸入最初まで4回空押しが必要です。必要に応じて患者さんには調剤薬局で充填空押しをしてもらいます。

C.ミストタイプ(長時間作用型抗コリン吸入剤LAMA+長時間作用型β2吸入剤LABA)

スピオルトレスピマット

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COPD適応
スピリーバのLAMAにオロダテロールのLABAを配合した薬剤です。非常に吸いやすく効果があります。吸入器具になれれば患者さんから別の薬剤に変更したことはありません。2吸入/回×1回/日です。副作用も少ないです。