医療情報

非結核性抗酸菌症(MAC症)とはどんな病気でしょう?
結核菌やらい菌以外の非伝染性抗酸菌症を非結核性菌抗酸菌症と称します。その多くはMAC症(Mycobacterium avium-intracellulare complex)です。
この菌は環境中に存在しており、バスタブ、給湯やシャワーヘッドなどの入浴施設、庭園の土との接触が発症に関係しているとの報告が多いです。非常に発育が緩徐です。
症状
おもに咳や喀痰が主たる症状ですが、進行すると血痰、全身倦怠感や体重減少をきたします。初期では症状がない場合も決して少なくありません。全体的には痩せた女性が多いです。
画像所見
専門的で申し訳ありませんが、結節陰影、小結節陰影、分枝状陰影の散布像、空洞所見、気管支・細気管支の拡張所見が特徴的です。


診断基準
- A. 胸部画像所見で上記の2項目を認める
- B. 細菌学的所見では喀痰検査で培養が2回陽性であること。
赤く染まっているのがMAC菌です。ちなみに右は同じ抗酸菌の結核菌。よく似ているでしょう。鑑別はPCR法で行いますが、補助的にはMAC抗体を測定します。
上記のA,Bを満たせばMAC症と診断されます。

治療方針と治療薬
MAC症は全ての患者さんを治療することはありません。
(診断後治療開始する症例)
- 血痰・喀血症例
- 空洞形成症例
- 高度な気管支拡張症例
- 病変が一側肺の1/3以上症例
- 喀痰塗抹排菌量2+以上症例
(診断後観察可能症例)
- 自覚症状がほとんど無く、画像で画像で空洞病変認めず、気管支拡張病変が軽度で病変の範囲が一側肺の1/3以内の塗抹陰性症例
- 75歳以上の高齢者
治療抗菌薬は通常「リファンピシン(RFP) + エタンブトール(EB) + クラリスロマイシン(CAM)」を用いますが、重症例にはストレプトマイシン(SM)を用います。副作用に注意しながら通常一年半以上服薬しますが、終了しても再発を起こすことは少なくありません。非常に難治性感染症であります。この治療は経験のある呼吸器専門医に任せるのが良いでしょう。
(参考:藤田昌樹:呼吸器疾患の治療2019-2020)