医療情報

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自宅でできる呼吸リハビリ

慢性呼吸器病(COPD、重症ぜんそくや気管支拡張症など)で息切れのある方は脳梗塞や心臓病と同様に呼吸リハビリテーションがあります。当院ではこのリハビリテーションを患者さん個々に指導しております。どんなものか少しご紹介しましょう。

A. 呼吸訓練

1. 口すぼめ呼吸:

口をすぼめて息を吐き出すと、気道の内圧力が高まり、細くなった気管支が広げられ肺に貯まった空気が外に出やすくなります。 鼻から「1,2」とリズムをとって息を吸いましょう。続いて口をすぼめて「1,2,3,4」と2倍の時間をかけて息をゆっくり吐き出しましょう。

2. 腹式呼吸:

横隔膜を上下に動かして行う呼吸法です。肺の奥まで新しい空気がゆっくり入り込まれ、貯まった肺の空気が押し出されます。
仰向けになって、軽く両膝を立てて手を胸とお腹に置きます。お腹を膨らませながら鼻から息を吸い込みましょう。お腹が膨らむのを感じます。つづいてお腹をへこませながら1の「口すぼめ呼吸」のように口をすぼめてゆっくり空気を吐き出しましょう。
1,2の訓練は10〜15分かけて1日2〜3回行いましょう。

B. 排痰訓練

気道に痰が貯まっていると肺の奥まで空気が入りませんので「排痰(痰を吐き出すこと)」は重要なことです。
まず、水分補給をしましょう。心臓に持病がある方は先生の指示をもらって、食間に一日あたりコップ8〜9杯を目安に常温の水を飲みます。痰が出やすくなります。続いていつも使用している吸入剤(気管支拡張剤)を痰が出やすい時間に吸入しましょう。

その後に胸部や背部に振動を与えて痰を出します。市販のマッサージ器バイブレーターで胸背部を振動させるか手のひらをお椀型に前胸部をポンポンと叩きましょう。終わったら息をゆっくり吸って「ハーッ」と早く強く吐き出します。

C. 呼吸体操・運動療法

Aの口すぼめ呼吸と腹式呼吸を取り入れながら行い、胸の動きをよくするとともに硬くなった首や肩の筋肉を柔らかくします。

1. 首と肩のリラクゼーションをしましょう

肩をすぼめてストンと落とします。頭を左右に回します。両手の指先を肩につけ肘を外に向けます。その状態で肩をほぐすようにゆっくりと腕を回します。

2. 胸郭(肋骨に囲まれた胸のこと)の筋肉をやわらげ動きやすくしましょう

両腕を水平にあげて左右に回します。終えたら両手を片側の胸に添え軽く息を吸った後、ゆっくり息を吐きながら押さえた胸の反対側に体を反らせます。同じように反対側も行いましょう。

3. 上肢を鍛えましょう

仰向きになって両膝を軽く立てます。両手に鉄アレイかペットボトル500g〜1000gを持ち上肢を上へ、頭の方へ、横に、足の方と各5〜10回休憩を入れながら行いましょう。

4. 下肢を鍛えましょう

椅子に腰掛けて息を吸い、口すぼめ呼吸と同様に立ち上がりましょう。5〜10回繰り返します。足首にウエイト(ストッキングに砂を入れて作っても良いです)を巻いて椅子に座り、足を水平まで口すぼめ呼吸を入れながら上げ下げします。

5. 腹筋を鍛えましょう

仰向けになり両手を頭の後に添え両膝を組みながら頭とお腹を反対方向にねじります。体をゆっくり戻す時にも口すぼめ呼吸を忘れずに!

D. 日常生活

  1. 規則正しい生活リズムを守りましょう。
  2. 適度な運動と十分な休息・睡眠をとりましょう。
  3. 食事は、野菜、海藻、魚介類、肉、乳製品などをバランス良く食べるように心がけましょう。
  4. 生活する身の回りを清潔(衣服、入浴や排便・排尿)に保つ工夫をしましょう。
  5. 風邪などの感染症の予防のため受動喫煙など空気の悪いところは避け、うがいと手洗いは心がけましょう。

(自宅でできる呼吸リハビリ 長崎呼吸器リハビリクリニック力富直人より)

「禁煙して運動を行っているCOPD患者さん」と「運動もせず禁煙も出来ない患者さん」との10年以上での1秒量の経年変化では明らかです。

このFEV1.0の変化をみてください。
左の患者さんは10年間日常生活に支障がない状態を維持できてます。
右の患者さんは禁煙が出来て改善したものの、過食や運動をしないために再び低下しています。