医療情報

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高血圧症とはどんな病気でしょう?

本態性高血圧症

診断のポイント

定義上は、安静時でも慢性的に血圧(血圧が140/90mmHg以上、上も下もどちらか一方でも)が高い状態が続いていることを高血圧症とします。
日本人の約4300万人が高血圧症です。この90%が、高血圧症の原因が特定されない「本態性高血圧症」です。高血圧症をもたらす素因(親が高血圧症といった家族歴など)とライフスタイル(喫煙、塩分過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、など)が関係しております。
その一方で、腎臓疾患や内分泌異常、心臓や血管の異常などが原因で起こる「二次性高血圧」があります。

高血圧症血圧については、慢性持続的に高いのか、一時的に高いだけなのかを評価する必要があります。診察室内で測定した時のみ血圧高値が認められる「白衣高血圧」の除外が必要です。

その一方、診察室内や健康診断などでは、血圧は正常範囲なのに、それ以外の時間帯(特に夜間、早朝)で高血圧である「仮面高血圧」があります。

わが国では血圧計を持っている家庭が非常に多いので、精神的ストレスの少ない居間や寝室などで測定される「家庭血圧」での判断が有用とされています。
高値になりやすい起床時一時間以内と低値になりやすい就寝前の一日2回の血圧測定が有用です。

症状

高血圧症であっても、血圧値にかかわりなくほとんど自覚症状がないことが多いです。ときには肩こり、頭痛、めまい、動悸などの症状が出る場合があります。ただ、目立った症状がないうちに発症し進行していくのが高血圧症の怖いところですので、決して軽く考えないようにしましょう。

検査

まず、本態性高血圧なのか、二次性高血圧なのかを判断するために検査を行ないます。問診や(糖尿病、脂質異常症や慢性腎臓病などの合併を見るために)血液生化学検査、尿検査、心電図検査、胸部エックス線検査などが基本の検査です。基本検査で問題となる臓器が疑われたら心臓や頸動脈のエコーや冠動脈CTなどを行い、高血圧による合併症の有無を調べることが必要です。さらに二次性高血圧の疑いがあるときは腹部エコーやCT、頭部MRI検査などの精密検査により、脳や心臓、腎臓などに高血圧の原因となる疾患がないかを調べます。

血圧目標

  診察室血圧(mmHg) 家庭内血圧(mmHg)
75歳未満成人 <130/80 <125/75
脳血管障害患者
(両側頚動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
冠動脈疾患患者
慢性腎臓病患者(蛋白尿陽性)
糖尿病患者
抗凝固剤服用中
75歳以上の高齢者 <140/90 <135/85
脳血管障害患者
(両側頚動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり)
慢性腎臓病患者(蛋白尿陰性)

治療

非薬物的治療

降圧薬開始有無に関わらず、生活習慣の改善を心がけることが大切です。当院では管理栄養士による食事指導を行います。塩分制限、肥満症や脂質異常などの方には野菜や果物を積極的に取るよう食生活の見直しを行うようにします。運動不足の方に健康運動指導士による有酸素運動などを指導します。

薬物治療

当院が処方している薬剤は下記となります。

  • Ca拮抗剤:アムロジピン、ノルバスク、アダラートなど
  • ARB剤:ニューロタン、ミカルディス、イルベタン、ブロプレス、オルメテックなど
  • ACE阻害剤:レニベース、コバシル、タナトリルなど
  • サイアザイド利尿剤:フルイトランなど
  • β遮断薬:メインテート、テノーミンなど

最近では上記降圧剤の配合剤が多く発売されており、その中には信頼できるメーカーの安心と安価な「オーソライズジェネリック」も多くあります。

  Ca拮抗薬 ARB/ACE阻害薬 サイアザイド系利尿薬 β遮断薬
左室肥大
LVEFの低下した心不全 (*1) (*1)
頻脈
(非ジヒドロビリジン系)
狭心症 (*2)
心筋梗塞後
蛋白尿/微量アルブミン尿を有するCKD

*1:少量から開始し、注意深く漸増する。*2:冠攣縮には注意。

  禁忌 慎重投与
Ca拮抗薬 徐脈
(非ジヒドロビリジン系)
心不全
ARB 妊娠 腎動脈狭窄症(*3)
高カリウム血症
ACE阻害薬 妊娠
血管神経性浮腫
特定の膜を用いる
アフェレーシス/血液透析
腎動脈狭窄症(*3)
高カリウム血症
サイアザイド系利尿薬 体液中のナトリウム、カリウムが
明らかに減少している病態
痛風
妊娠
耐糖能異常
β遮断薬 喘息
高度徐脈
未治療の褐色細胞腫
耐糖能異常
閉塞性肺疾患
未梢動脈疾患

(2019年日本高血圧学会ガイドライン)

2剤併用の組み合わせ